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色を何色まで使ってよいか、昔は決まっていた

エデュ・プラニング数学課です。

教科書にはかつて、使ってよい色数の目安がありました。「体様のめやす」といいます。

判型、ページ数、色刷り、文字の大きさ、紙質。教科書協会がこうした目安を示し、各社がそれに沿って作っていました。平成11年度以降、この目安はなくなります。

その後の動きは、はっきりしています。

教科書協会が発行者19社に聞いた調査には、小学校は平成14〜16年度、中学校は平成14〜17年度の使用教科書から「一気にカラー印刷化が進んだ」と書かれています。国立教育政策研究所の資料には、めやすの廃止後について「定価の範囲内で,大判化,カラー化がなされ」とあり、続けて「過度なカラー化については疑問の声も出ている」と書かれています。

変わったのは色だけではありません。

小学校の教科書の総ページ数は、各社平均で平成17年度の4,857ページから平成30年度の7,587ページへ増えました。

判型も、平成17年度はB5判が96.3%でしたが、令和2年度はB5判39.0%、AB判40.7%、A4判20.3%と割れています。

 

 

 

 

 

判型の比較。AB判は横に、A4判は縦にも広がる。

色が自由になって十年あまり後、別の決まりができます。

2011年度に使い始めた小学校の教科書から、多様な色覚への配慮が必須になりました。

検証の基準には「ヒントを色で表現しない」「回答を色で塗り分けさせない」といった項目が並びます。

先天赤緑色覚異常の頻度は、日本眼科医会の冊子によれば日本人男性の5%、女性の0.2%。400人の学校なら、10人ほどが在籍している計算です。

自由に使えるようになった分、色だけには頼れなくなりました。残ったのは、その色に何の意味を持たせるかを決める仕事です。

書体は、もっと前から役割で決まっていました。

小学校の教科書は本文に教科書体、中学校からは明朝体を使います。

教科書体は、学年別漢字配当表の字体にしたがって作られた、子どもが書く手本になる書体です。

明朝体は読みやすさを主眼にデザインされた書体で、小学校で漢字の書き方を学んだあとは、新聞や一般の本と同じ字で読むことになります。書く本と読む本で、書体が替わるわけです。

 

 

 

 

同じ一行を、教科書の書体と大きさで並べたもの。

数学の紙面には、自分たちで決めるしかない部分があります。

日本語の組版には産業規格があり、横書きでは和文と欧文の間を全角の四分の一空ける、といった細かさで決められています。

ところが数式は対象外です。規格が数式に触れているのは、入れ子になった添え字を「規定しない」と書いた箇所だけでした。

変数は斜体、数字や単位は立体という書き分けは別の規格にありますが、日本語の文章に数式をどう流し込むかは、各社が決めるしかありません。

 

 

 

 

同じ m でも、斜体なら変数、立体なら単位。

決めるのは一冊の最初です。色は何色で、それぞれ何の意味か。書体は本文と指示と数式でどう分けるか。数式を行のどこで折るか。決めたものは途中で増やさず、増やすときは最初から最後まで通します。一か所のために作った形は、必ず別のページにも出てくるからです。

教材の制作を外に出すときも、見るところは同じです。見本のページの色数ではなく、その色が何を指すのかを書いた表があるかどうか。最初の数ページの設計が、そのあとの数百ページを決めます。

「体様のめやす」がなくなって四半世紀が過ぎました。

色を何色まで使ってよいかを、外から決めてくれる人はもういません。決めるのは作る側です。紙面の良し悪しは、カラフルかどうかではなく、その赤が最後のページまで同じ意味かどうかで決まります。

 

参考:教科書協会『平成20年度「教科書の充実のための体様等の工夫に関する調査研究」報告書』 https://www.textbook.or.jp/about-us/pdf_h20/p05-24main.pdf / 教科書協会『教科書発行の現状と課題』 https://www.textbook.or.jp/publications/data/23tb_issue.pdf / 国立教育政策研究所「教科書制度と教育事情」 https://www.nier.go.jp/seika_kaihatsu_2/risu-2-200_seido.pdf / カラーユニバーサルデザイン機構『平成27年度用 小学校教科書のCUD検証合格基準』 https://cudo.jp/wp-content/uploads/2019/07/合格基準.pdf / 光村図書「教科書の言葉Q&A 第4回 教科書で使われている書体は?」 https://www.mitsumura-tosho.co.jp/webmaga/kotoba-to-manabi/kotoba/detail04 / 日本眼科医会「色覚異常を正しく理解するために」(平成20年4月・監修 北原健二) https://www.gankaikai.or.jp/colorvision/detail/post_9.html / 組版と数学記号の規格は JIS X 4051「日本語文書の組版方法」、JIS Z 8000-2「量及び単位―第2部:数学記号」、産業技術総合研究所『国際単位系(SI)第9版 日本語版』

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