エデュ・プラニング数学課です。
AIで教材って作れるんですか、と打ち合わせの席で聞かれることがずいぶん増えました。
正直なところ、技術的には作れそうだな、と感じることはあります。
試しに動かしてみると、素案の叩き台や、似た型の問題を並べる程度のことは、それなりに形になって出てきます。
ただ、納品する教材の中に入れるとなると、まだ任せきれない部分が残っていて、いまは社内で試しながら使いどころを探っている最中です。
任せきれない理由を、二つほど書きます。
一つめは、AIが何を学んで今の姿になっているのか、はっきりしないことです。
ChatGPTも他社の生成AIも、学習に使ったデータの中身を完全には公開していません。
インターネット上のテキスト、書籍、論文、とざっくりは示されていますが、
中学2年の数学の問題集については、どの出版社のどの版を、どの章まで学習に使ったのか、外からはわかりません。
国内の出版社と学習データの利用許諾を個別に結んでいるのか、そもそも許諾のないまま学習されているのかも、
いまの時点ではっきりしていません。
教材を作る側から見ると、ここは無視できません。
連立方程式の応用問題を10題つくってほしい、と頼んで返ってきた問題が、
どこかの問題集の既存問題と近い型だったときに、こちらで気付けるかどうか。
手元の本と突き合わせればある程度は見えますが、世の中の問題集すべてとは照合できません。
業界に長くいる方ほど、知らないところで似てしまったらどうしよう、とつい身構えてしまうと思います。
二つめは、範囲外の内容が、解説の中に気付かないうちに紛れ込んでくることです。
中学3年生向けの教材で、平方根の導入章の解説文を書かせてみたことがあります。
出てきた文章には、高校で扱う有理化の考え方を前提にした言い回しが、当然のように入っていました。
この章では有理化はまだ扱わない、と前置きをしても、次の出力でまた混ざる。
証明の解説を書かせたときも、中2の段階ではまだ扱わないはずの定理を、
名前こそ出さないものの、結論の根拠にさらっと取り込んでいる、ということが起こります。
数値替えや言い換えを頼むときも同じです。計算結果の部分だけ差し替えてほしい、と指定しても、
出てきた文面の中に、その学年ではまだ出会っていない記号や言い回しが紛れていないか、結局は一文ずつ人間が確認することになります。
学年と単元、既習事項と未習事項の線引きは、業界にいる人間にとっては当然の前提です。
中2のこの章ではこの定理は使わない、中3のこの時期にこの記号はまだ出さない。
この種の取り決めが、教科書の配列や指導書、現場の進度と細かく結びついています。AIには、その結びつきが見えていません。
では、まったく触れずにいるかといえば、そうでもありません。
社内で試しに動かしたり、原稿そのものではない場面、たとえば題材候補の洗い出しや、言い換え案の相談相手としては、ときどき使っています。
ただ、子どもたちの手元に届く原稿そのものにAIの出力を取り込むかどうかは、いまのところ別に考えています。
ここの一線は、きちんと引いたままにしておきます。
だから、いまは作れるとも作れないとも言いにくいところがあります。
技術としては届きそうなところまで来ていますし、実際に触れば助かる場面もある。
ただ、何を学習してきたのかが外から見えないことと、範囲外の内容が気付かないうちに紛れ込むこと。
このあたりの引っかかりが片付くまでは、業務に本格的に取り入れるのは、もう少し先になりそうです。
AIで教材って作れるんですか、と聞かれたときの、いまの正直な返事です。