2023年度の大阪公立高校入試一般選抜の出願者数は3万8750人でした。理科の入試問題といえば,実験や観察を元に考えるのが定番ですね。2023年度の大阪の入試もすべての大問が実験を元にしたものでした。おおむねよく見る定番の問題でしたが,大問1は「みその製法」という少し珍しいテーマでした。
理科の教科書にみその実験なんか載っていたかな?と一瞬思いますが,例えば,啓林館(中3)の262ページにはコラムとして,微生物とみその関係について載っています。あくまでコラムなので,入試で出たような実験そのものが載っているわけではありませんが,問題の中身を見ると,設問自体は標準的な教科書の事項を問うていることがわかります。
実際の問題では,まず,【○○について調べたこと】として,ダイズ,コウジカビ,酵母菌の情報がきっちり提示されています。(1)~(3)は,中1生物,中3生態系の分野からの単純な知識問題と計算問題ですが,(4)~(6)にかけては,最終的にダイズ中のデンプンにコウジカビや酵母菌がどのようにはたらいて,みその香りのもとになるエタノールがつくられるのかを実験で検証しています。(4)ではヨウ素液とベネジクト液を用いて,デンプンが麦芽糖に分解されたことを確かめるという,教科書通りのオーソドックスな問題(中2生物)で,(6)では,それに加えて,コウジカビによって生成された麦芽糖に酵母菌がどのように作用するかも考察する問題になっています。この(6)が,大問中で少しオリジナリティのある部分だったかと思います。よくある,だ液のデンプンを分解するはたらきを調べる実験などとちがい,コウジカビと酵母菌というそれぞれはちがうはたらきを持つ2種類の生物のはたらきを同時に調べる分,比べる実験の条件が多くなり,対照実験の考え方からどの条件とどの条件を比べるとよいかを考えて答える必要のある問題になっています。
このように,身近な題材について基本的な理科の実験から考えさせるというのも,最近の大阪の入試の特徴ですね。例えば,2022年の入試では福井県三国港の『突堤』(地学分野),2021年の入試では『有人潜水調査船「しんかい」』(物理分野)がテーマの大問がありました。
大阪に限らず,身近な題材をテーマに考えるという問題構成は多くの都道府県で見られます。日ごろから理科の話題に興味を持っておくということが,生徒だけではなく,問題を作成する側の我々にとっても大事になりそうです。私も書店で理科の読み物があったら買って通勤中などに読むようにしています。
大阪公立高校入試一般選抜「理科」の振り返り
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