理科といえば、「単位」が非常に重要な教科ですね。特に、公式を使うためには、まず単位を正しく変換したりする必要があります。
さて、問題文の中や参考書の説明文では次のように、物理量(質量や速度、体積、…などの物理的な意味をもつ量)を変数(文字式)で表すことがよくありますよね。
・~時間をt〔s〕とする。
・~電流をI〔A〕とする。
・~質量をmとする。
・~速度をv〔m/s〕とする。
等々。
おや、3つ目の「m」には単位がついていませんね。脱字をしてしまいましたか・・・。いえ、実はそうとも限りません。
その理由を考えるヒントは、物理量という言葉の意味と、国際単位系(SI)にあります。理科で扱う物理量の単位は「この単位を使いなさい」と国際的に決まっています。これが国際単位系(SI)です。また、ここでの物理量とは単位のついた量のことを言い、物理量と言った時点でそこに単位は含まれていることになります。
以下に国際単位系(SI)で定められている単位の例を挙げます。
つまり、「~質量をmとする。」において、物理量「質量」には元々単位が含まれているので、わざわざ〔kg〕をつける必要がないのです。m〔kg〕と表記すると、ある意味、単位を2重に表記しているようなものということですね。ただ、参考書では、m〔kg〕のように〔 〕でくくって物理量に単位を併記した形がけっこう見られます。これは、学生にとってわかりやすいことを優先し、あえて入れているのだと思います。というのも、国際単位系(SI)を理解し使いこなすことは、中学生はもちろん、物理や化学を学び始めたばかりの高校生にとっても難しく、また、覚えることが増えるうえに、受験で国際単位系(SI)について問われるケースはレアですから。
また、2022年・2023年に改訂された高校理科の教科書では、物理量の単位の扱いについての変更が見られました。例えば、啓林館の『化学基礎』では、中和滴定の関係式の表記が次のように変化しています。
・旧版(H29年度):体積V〔mL〕と定義し、式中ではV/1000〔L〕に変換している
・新版(R4年度):体積V〔L〕と定義し、式中でもV〔L〕を使用している
(※新版は、脚注で、「水溶液の単位がmLのときは、1L=1000mLより、1mL=1/1000 Lを用いて換算し式に代入する」と併記)
旧版では、式に代入する前と後で、単位がmLからLに変わっていて、ここで与えられているVという物理量の単位があいまいになっています。つまり、新版では、より誤解を生みにくいような物理量の扱いをする方針へと改訂されたのだと考えられます。単位には前述した国際単位系(SI)というものがあるように、ある意味世界共通言語ですから、使用するときには厳密性とわかりやすさの両方に気をつけないといけないということが実際に教科書をみてもよくわかりますね。
皆さんも今後物理の参考書や教科書を手にとる際、その書籍内では単位がどのように表記されているか、ぜひ着目してみてください。
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