ブログ

大学入試でほとんど出題されない「作図」を学ぶ意義とは

エデュ・プラニング 算数・数学課

今回のテーマは「作図」です。高校入試では「定規」と「コンパス」を使用した作図の問題が出題されますが、大学入試で作図の問題が出題されることはほぼありません。
私の認知している直近10年の大学入試問題の中で、作図問題の出題は1問です。また、その問題も実際に作図させるのではなく、どのように定規とコンパスを使えばある指定の図形を書くことができるか、作図の手順を問う問題でした。さらに、直近3年の「全国大学入試問題正解」を確認してみても、作図を行わせる問題も、作図の手順を問う問題も確認できませんでした。
しかし、数学Aの教科書には必ず、「作図」の単元が存在し、そこでは、中学生の数学で習う作図と同じように「定規」や「コンパス」を使い、図形を作図することを学ばせています。そのためか、大学入試で出題されなくても、一部の参考書では、数学Aの学習内容として、作図の問題が掲載されています。
では、なぜ大学入試では作図の問題が出題されることがないのでしょうか?また、教科書で作図を学ぶ意義とは何なのでしょうか?

・大学入試で作図が出題されない理由
大学入試で作図が出題されない理由は複数考えられます。まず、大学入試では一般的に「定規」と「コンパス」の使用が禁止されていることが多いです。共通テストなどでの規則に基づき、多くの大学もこれを禁止しているのだと考えられます。
また、解答方法や採点の難しさがあります。選択肢問題だと作図の難しさが薄れ、作図させる問題だと多くの異なる解法や描き方が考えられるため、多くの別解が発生したり,採点に手間がかかる可能性があります。

・作図を学ぶ意義
数学Aの教科書の平面図形の単元で作図が必ず掲載されていることや、一部の参考書に作図の問題が掲載されているのは、作図を通して図形に対する理解を深めることができるためだと考えられます。
実際に「定規」と「コンパス」を使って図形を描くことは、抽象的な概念を具体的に理解することにつながります。作図は、指定の図形に対して、それはどのような図形的な縛りがあって定められる図形であるのかを、考えることへの必要性を与えることができます。この思考に必要性を与える点や、思考の過程において、道具を使って、手を動かし実感を得ることができことが作図の魅力ではないでしょうか。
例えば三角形の外心の定義についてです。外心の定義が「3辺の垂直二等分線の交点」であることをすぐに受け入れづらい学生も多いかと思います。ここで、作図問題の経験をふむことで、「三角形の外心」⇒「3つの頂点から等距離の点」⇒「それぞれの2点から等しい距離の直線上の交点」⇒「3辺の垂直二等分線の交点」といった考える流れを学ぶことができます。
このような経験を積むことで、様々な図形がどのいう手順で定まり、なぜそのような図形が書けるのかを実感として学ぶことができるのです。

作図は、図形に対しての洞察を深め、一般化された図形の証明問題においても活用できる思考力を身につける手段として非常に有効だといえます。
大学入試で出題はされることはないかもしれませんが、作図は数学の基本的なスキルとして非常に重要なので、是非真剣に取り組んで欲しいと思います。

コメント

この記事へのコメントはありません。

関連記事

TOP