エデュ・プラニング国語課です。今後、業務のなかで気づいたことや、知ったことで、気になることなどをblogにまとめていこうと思います。
さて、2022年の11月に、大学入試センターが令和7年度大学入学共通テストについての「方向性」を発表しました。国語の大きな変更点として、「近代以降の文章」を扱う大問が1つ増えたことが挙げられます。また、それにともなって試験時間が増え、大問ごとの配点も変化しています。
大学入試センターWebページ 令和7年度試験の問題作成の方向性,試作問題等:https://www.dnc.ac.jp/kyotsu/shiken_jouhou/r7ikou/r7mondai.html
「方向性」とともに公開された「試作問題」を見ると、新学習指導要領で「現代の国語」によって育成するとしている、「実社会・実生活における言語による諸活動に必要な能力」をはかるための問題といえます。2つの「試作問題」が公開されていますが、第A問では「気候変動とその影響」、第B問では「言葉遣いによる話者の属性の判断」がテーマとなっています。どちらの問題も受験者にとって身近にとらえやすい、実社会・実生活に即したテーマが選ばれています。哲学や文芸論など普段の生活では触れることの少ないテーマについて、与えられたテキストから読み取るのとは違う読解力が求められます。 また、単一のテキストの読解ではなく、グラフや図をふくめた複数の資料を関連付けて読み取る能力をはかる問題となっています。グラフを用いた問題であっても、単純に数値を読み取るだけではなく、他のテキストとの関連性や文脈をふまえた読解が求められます。(第B問 問1)
そして、マーク方式でははかることの難しかった、論述や話し合いなどの「言語活動」の能力をはかるために出題も工夫されています。単なるテキスト読解にとどまらず、資料をふまえて作成するレポートの構成についての問い(第A問 問3)、作成するレポートの論拠として補足するべき内容の検討(第B問 問4)といった出題を行うことで、「言語活動」の能力をはかろうとしています。
「方向性」や「試作問題」の作り方からは、高校での学習で受験者にどのような能力を身につけていてほしいと考えられているかがわかります。普段から社会の動向などについて自分の意見を持っているか、その意見について資料やデータで裏付けることができるか、それをわかりやすく人に伝えることができるか。逆に、人の意見について資料やデータを読み取ったうえで正しく理解することができるかといった、実社会・実生活で役立てることができる実学としての国語の力が必要とされています。2021年度に共通テストに移行してから、設問中に資料文が追加されたり、複数テキストの読解が追加されたりすることで、少しずつ傾向が変化しつつありました。「試作問題」と同様の問題が出題されるのであれば、これまでよりも大きな変化となります。
このような傾向は大学受験にとどまらず高校受験、中学受験にも広がりつつあります。主体的な学習や情報を活用する力が重視されはじめているので、複数の資料を活用して考える問題はこれからもさまざまな形式で出題されるのではないでしょうか。
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