大学入試に続き、高校入試も幕を閉じました。
大阪に住んでいることもあり、近畿圏の動向から分析を進めていたのですが……
やはり、ありました。
2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)を題材にした出題です。
最新技術や展示内容をきっかけに、そこから設問へと繋いでいく構成を目の当たりにし、
改めて「実体験と学びの距離」について深く考えさせられました。
文部科学省の理科の学習指導要領には、常に「身近な事物・現象」という言葉が登場します。
しかし、現代の中学生にとって「身近」とは、一体何を指すのでしょうか。
教科書を開けば、美しい自然や生物の写真が並んでいます。
しかし、都会の中学校では、カエルやツクシ(スギナ)を映像で観たことはあっても、
実際に自分の目で見たことがない生徒がいることは決して珍しくありません。
また、学校現場の諸事情により、生徒自身が実験道具に触れる機会が限られ、
先生が教壇で行う実験を眺めるだけで終わってしまうケースも耳にします。
そういった自然や実体験から遠ざかっている子どもたちにとって、テレビやネットで目にし、
あるいは実際に足を運んだ万博という大きなイベントは、数少ない「身近」な共通の体験、興味になり得ます。
たとえば、今年の近畿圏のある公立高校入試では、
万博の日本館に併設されたバイオガスプラントを題材とした物質の循環に関する問題や万博までの移動手段の船を題材とした水素電池の問題が出題されました。
単に知識を問うのではなく、”社会の最前線で起きていることと、教室で学んだことはつながっている”と気づかせる仕掛け。
この広く共有された興味を入り口に、子どもたちの視線を「探究」へと向けようとしたのではないでしょうか。
つまり、入試問題は単なる選抜の道具ではなく、
その地域や学校が子どもたちの“どんな力を育みたいか”を象徴する「メッセージ」とも捉えることができます。
教材・模試を制作する立場からすると、現実にはページ数の制限や仕様、あるいはスケジュールといった、
いわゆる“大人の事情”によって、理想がすべて叶わないことも多々あります。
それでも、「身近な事物・現象」と子どもたちがもつ数少ない実体験をどう結びつけるか。
ページの中に、いかに「そうか、こういうことだったのか!」を潜ませられるか。
“どんな力を育みたいか”を考え、単なる知識の伝達ではない「学びの納得感」を私は常に意識し続けていたいと思っています。
さて、つい先日までイタリアのミラノ・コルティナで冬季オリンピックが開催されていました。
来年度の入試では、あの熱狂がどのような「メッセージ」となって現れるのでしょうか。
今から問題用紙を開く瞬間が楽しみです。