二月を旧暦で如月(きさらぎ)とよぶのは、「衣更着」からきているという説が代表的です。
旧暦の二月は、現在の暦の二月下旬から三月上旬にあたり、まだまだ寒さが残る時期なので、
衣を重ね着する月であることからそうよばれたそうです。
古くから日本には衣を何枚も重ねて着る風習があり、
衣を重ねたときに袖や裾から見える色の組み合わせや表裏の色の組み合わせのことを「襲(かさね)の色目」といいます。
襲の色目は、その組み合わせで四季を表現するため、季節ごとに色の区分がありました。
例えば冬の色目の「雪の下」。
これは表が白、裏が紅梅(薄いピンク)の襲の色目を指します。
旧暦の二月は「梅見月」と称されるように、少し気温がゆるむと梅の花が咲き始め、
その後しばしば雪が降ることから、平安の人々にとって、梅に雪が積もる情景は冬の象徴だったのでしょう。
そして春の色目「紅梅」。
紅梅は、表が紅梅、裏に蘇芳(すおう)(ワインレッドのような濃い赤色)の襲の色目で、
雪が溶けて咲き誇る梅の花を表現した色目になります。
さらに、春に使う紅梅と冬に使う紅梅では、春の方が少し色味が濃くなるので、
その点でも季節ごとの梅の花の違いを表現しています。
このように日本語の色の表現は自然に由来したものが多く、世界でも類を見ないほど、細分化されています。
ほかにも、黄と蘇芳で秋の「紅葉」、赤系統の蘇芳と青系統の縹(はなだ)(ブルーグレーに近い色)で
季節関係なく使える「葡萄(えび)染(ぞめ)」(赤系統と青系統を混ぜた色が紫に近くなるので、
山葡萄のような色と表現する)など、その表現は多彩で、受け継がれる日本の伝統色の深みがわかります。
伝統色で「青(せい)磁(じ)」といえば、今思い浮かべた青色ではなく、
青みがかった緑を指し、「虹色」といえば、七色ではなく、淡いピンクに近い薄い紅色を指します。
古典作品では、色の表現は多種多様で、特に平安の女性たちは、御簾や扇で顔を隠すので、
御簾からはみ出した襲の色目が鮮やかに映ったことでしょう。
古典作品だけでなく現代の小説でも、登場人物の名前や小物、
自然の情景などに色を用いた表現は多用されるので、好きな作品に登場する色の表現に注目して、
その由来やどのような色なのかを調べてみるのも面白いと思います。