エデュ・プラニングの社会課です。
学生であれば、夜遅くまで塾で勉強した帰り道、社会人であれば、残業をして帰宅するその夜道、「あれ、今後ろに何かいる」と感じたことはないでしょうか。
今回は、夏の風物詩、「怖い話」をしてみようと思います。 冒頭の話題になりますが、「後ろに何かいる」と感じたとき、そこにいるのは“べとべとさん”かもしれません。べとべとさんは日本の妖怪の一種で、水木しげる先生の漫画『ゲゲゲの鬼太郎』にも登場します。鳥取県の米子空港駅には「べとべとさん駅」という愛称が用いられているので、もしかすると、そこから知っている人もいるかもしれません。
ちなみに、姿は見えないこの妖怪べとべとさんですが、水木しげる先生曰く、「べとべとさん、先におこし」と言ってあげると気配が消えるそうです。ぜひ、夜道で背後に気配を感じた際には、実践してみてください。
さて、水木しげるロードのある鳥取県境港市は、まちづくりの基本目標に、全国的なブランドである「さかな」に加え、「鬼太郎」を活かすことを掲げ、企業誘致や雇用創出につなげています。全国的には衰退傾向にある商店街ですが、水木しげるロード周辺の商店街には、赴く度に新たな出店も見られます。
また、夜になると、道路の照明を活かして地面に妖怪を映し出し、昼間には味わえない怖い雰囲気を味わうことができるため、これを体感しようと周辺ホテルに宿泊する人もいるようです。このように考えると、水木しげる先生が残したものは、作品だけではないのかもしれません。
ここまで何度も名前を挙げていますが、「妖怪」と聞いて、まず思い浮かぶのは水木しげる先生ではないでしょうか。1922年に大阪市で生まれ、境港市で育った水木しげる先生は、1941年に始まった太平洋戦争では南太平洋のニューブリテン島で片腕を失うなど壮絶な経験をしています。軍体制を戦時から平時に戻す復員後、先生は好きなものに素直に向き合い、妖怪をただ怖い存在としてではなく、身近な愛すべき存在としても描きました。
そんな水木しげる先生は、その自身の経験から多くの言葉を残しています。例えば、「喧嘩はよせ 腹が減るぞ」という言葉。このほかにも、先生の言葉には、過酷な環境と多くの出会いを経験してきたからこその幸福論がみられます。 印象的な先生の言葉の1つ、「私は“睡眠力”は“幸福力”ではないか、と思っている」に注目します。
再び冒頭の話題に戻しますが、例えば、「夜遅くまで勉強を( )」や「夜遅くまで仕事を( )」といった場合、この空欄に当てはまる語句として何を入れますか。「頑張る」を入れがちではないでしょうか。 経済協力開発機構(OECD)による各国の平均睡眠時間の比較では、日本人は先進33カ国中睡眠時間が最も短いと示されています。
例えば、アメリカの平均が8時間51分なのに対し、日本の平均は7時間22分であり、その差は約1時間半もあることになります。さて、この差はどこから来るのでしょうか。 もしかすると、これも妖怪のせいなのかもしれません。水木しげる先生の著書『ゲゲゲの鬼太郎 妖怪ファイル』(講談社)で「いそがし」という妖怪が紹介されています。なんと、「この妖怪にとりつかれると……何もしないでじっとしていることが、とても悪いことだと感じる」のだそうです。
この本に、先生も書かれていますが、もしかすると日本人のほとんどが、この妖怪にとりつかれているのかもしれません。
ゾっ。
さらに、睡眠はパフォーマンスに大きく影響を与えることが研究でも示されています。一晩徹夜した脳は、完全に酔っ払っている状態と同程度までパフォーマンスが落ちるといった研究結果もあるようです。
また、慢性的な睡眠不足は、メンタル不調やがん、認知症のリスクを上げるともいわれ、日々遅くまで頑張りすぎている人には、怖い話です。 また、夜なかなか眠れないときに、「目を閉じて横になっているだけでもいいから」と言われた経験はないでしょうか。これは、身体の疲れはとれる可能性はあるものの、脳の睡眠要求には応えられていないそうです。
この夏の暑い夜、寝たいけど眠れないとき、先の言葉を信じて目を閉じていた人、おそらくいると思います。そういった人にとっての、怖い話でございました。エアコンなどを上手く活用して、眠りやすい環境で睡眠をとるようにしましょう。
さて、頑張らないといけない空気を感じるのは現代妖怪「国家」のせい、寝付けたと思ったのに夜中に目が覚めるのは妖怪「枕返し」のせいなど、今回の話題に沿って紹介したい妖怪は尽きないのですが、頑張る受験生、そして社会人に、水木しげる先生の言葉を贈り、この記事を締めくくりたいと思います。
まず寝ることが、幸福の基本