エデュ・プラニングの数学課です。 今回は子どものころ一度はしたことがあるであろう遊びが、実は数学が関連していることに気付かされるお話です。さて、突然ですがクイズです。この地図はどこの都市のものでしょうか?この地図を見て、何の話かを勘づかれた方は相当な数学好きだとお見受けします。答えはケーニヒスクベルクという都市の地図でした。現在はロシア連邦のカリーニングラードとして知られており、かの哲学者カントの眠るケーニヒスクベルク大聖堂やロシア最大のマリンミュージアムである世界の海洋博物館があることでも知られています。
この都市と数学との関係は18世紀の初頭まで遡ります。先ほどの地図の右下の方にもその一部が描かれていますが、ケーニヒスクベルクを流れるプレーゲル川には当時7つの橋が架かっていました。町の人は「このプレーゲル川に架かっている7つの橋を2度通らずに、全て渡って、元の所に帰ってくることができるか。」ということを考えました。この話を数学で解決しようとしたのが、レオンハルト・オイラーです。オイラーは橋をグラフに模式化し、このグラフが一筆書きできるかどうかという問題に捉え直しました。そして、オイラーはこのグラフが一筆書きできないことを証明し、無事に解決されました。
ここで登場したグラフ理論は、それぞれがどのように関連しているのかを見るのに長けています。現在では、数学だけでなく、電気回路や脳の回路などの物理や生物分野、さらには社会科学分野では人間どうしの関係や行動を見るために、また、言語学では単語どうしの関係性を見るためなどの幅広い分野で応用されています。
そんなグラフ理論を用いて、「オイラーの定理」という、一筆書きができるかを判別する方法も発見されています。一筆で書くためには、次の2つのうちどちらかにあてはまっていなければなりません。「①すべての頂点から出ている線の数が偶数の本数」か「②2つの頂点だけ奇数の本数で、残りは偶数の本数」の2つです。
正方形をもとに考えてみましょう。正方形は言うまでもありませんが、各頂点から2本ずつ線が伸びており、一筆書きができる図形です。ここに1本対角線を引いた図形は、4つの頂点のうち、2つは2本ずつ線が出ており、残り2つは3本ずつ線が出ています。これも先ほどの②にあてはまります。さらにもう1本対角線を加えてしまうと、各頂点から3本ずつ線が出ていることになり、どちらのパターンでもないので一筆書きができないと判別できます。これを知れば、どんな複雑な図形でも一筆書きできるかどうか簡単に判別することができます。
今回の一筆書きのように、一見数学とは無縁のような事柄も実は数学が関連しているのは非常に興味深いことだと思います。私たちも日々、学習者が少しでも興味や関心を惹くことができるような教材制作を進めております。